2歳で言葉が少ないと感じたら|言語聴覚士が大切にするポイント

保育園のお迎えのとき、同じクラスの子が「おうち かえるの?」「こうえん いったよ」とおしゃべりしているのを聞いて、ふと、言葉の少ないわが子と比べてしまう。2歳前後は、そんな心配が増える時期です。

私は言語聴覚士(以下、STと表記)として、区立の発達センターや児童発達支援事業所などで20年以上、幼児の言葉の相談を受けてきました。相談に来られた親子とは1時間ほどおもちゃで遊びながら、保護者の心配をお聞きしてアドバイスをしたり、療育での支援をお勧めすることもあります。

親御さんからしたら、療育の専門家から何を言われるか不安な瞬間かもしれませんね。知らない人や場所に緊張して、保護者から離れられないお子さんもいます。ただ、おもちゃで一緒に遊び始めると、保護者が驚くほどに楽しむことができて、今度は帰りたくないと駄々をこねるお子さんも多いものです。そのとき私が見ているのは、「いくつ言葉を話せるか」ではなく、言葉やコミュニケーションの全体的な力です。

保育園へのお迎えの様子

この記事では、STが相談の場で見ている言葉の「土台」と、ご家庭でも確認できるポイントをお伝えします。

  • 2歳ごろの言葉の目安と、個人差のこと
  • STが見ている「理解・関心・コミュニケーション・運動」
  • 家で確認できるチェックポイント
  • 相談を考えたいサイン
目次

2歳ごろの言葉の目安と、個人差のこと

2歳前後は、「ワンワン、いた」「ジュース、ちょうだい」のように、単語を2つつなげる二語文が出始める子が増えてくる時期です。自治体の子育て資料などでも、2歳ごろの発達の目安としてよく挙げられています。

ただ、言葉が出てくる時期には大きな幅があります。同じ2歳でも、たくさんおしゃべりする子もいれば、まだ単語がいくつかという子もいます。保育園では月齢の近い子がたくさんいるぶん、どうしても違いが目に入りやすく、比べて不安になるのは自然なことです。

だからこそ、話せる言葉の数だけで判断しないことが大切です。

お母さんと子供が絵本を読む

STが見ているのは「話せる言葉の数」より、その土台

相談の場では、最初からお子さんに「何か言ってみて」と求めることはしません。おもちゃを出して、まずは一緒に遊びます。遊びの中に、言葉の育ちを知る手がかりがたくさんあるからです。

言葉を木にたとえると、口から出てくる言葉(表出)は、枝の先になる「実」のようなものです。その実を支えているのが、理解(言葉が分かる力)・関心(人や物への興味)・コミュニケーション(人と気持ちを通わせる力)・運動(口を動かす力)という根っこと幹です。私はこの土台がどう育っているかを、いちばん丁寧に見ています。

① 理解:言葉が分かる力

話す言葉が少なくても、分かっている言葉はたくさんある、というお子さんは少なくありません。遊びの中で、たとえば次のような様子を見ています。

  • 「ボール、ちょうだい」と言うと、渡してくれる
  • 「ワンワンいたね」と聞くと、絵や人形を見たり指差す
  • 「お片付けしようね」の声がけを理解する

このとき私が丁寧に見ているのは、お子さんの理解の手がかりです。言葉だけで理解している場合もあれば、身振りや周りの様子をヒントにしている場合、言葉の理解がまだ難しかったり、関心が向いていなかったりする場合もあります。ここは、専門職でも見極めに時間をかける、とても繊細なところです。

お子さんの理解の様子は、大きく次の3つに分けて考えることができます。

  • 言葉だけで分かっている:指さしや物などのヒントがなくても、声かけだけで動ける
  • 身振りや周りの様子をヒントに分かっている:指さしや見せた物、いつもの流れがあると動ける
  • 理解が難しい、または関心が薄い:ヒントがあっても、求められていることが分かりにくい様子がある

どれが良い・悪いということではありません。身振りや状況から相手の気持ちをくみ取れるのも、大切な力のひとつです。ただ、言葉の育ちを知るためには、言葉だけで分かっている範囲を見ていくことが大きな手がかりになります。

ご家庭で様子を見るときは、指をささず、物も見せずに、いつもとは違うタイミングで声をかけてみてください。たとえば、遊んでいる途中に「くつした、どこ?」と聞いてみる、といった具合です。テストのように何度も試す必要はありません。毎日の生活の中で、お子さんが分かっている場面と迷っている場面を注意深く観察してみると、少しずつ見えてくるものがあります。

親子で積み木遊びをする

② 関心:人や物に興味を向ける力

言葉は「伝えたいこと」があって出てくるものです。その「伝えたいこと」のもとになるのが、人や物への関心です。

  • 新しいおもちゃに手を伸ばし、いろいろ試してみる
  • 積み木を電話に見立てたり、ぬいぐるみに食べさせるまねをしたり、「見立て遊び」「ふり遊び」をする
  • 大人がしていることに興味を持ち、まねをしようとする

見立て遊びやふり遊びは、「目の前にないものを頭の中に思い浮かべる力」が育ってきているサインのひとつです。この力は、物に名前があることを理解し、言葉を使っていく力ともつながっていると考えられています。

子供が一人で積み木で遊ぶ

③ コミュニケーション:人と気持ちを通わせる力

言葉は、人とやりとりするための道具です。言葉が出る前から、子どもは目線や指さし、表情や声で、たくさんのことを伝えています。

  • 楽しいときや驚いたときに、大人の顔を見る
  • 大人と同じものを一緒に見ようとする(「共同注意」と呼ばれる力です)
  • 指さしや身振り、声で「見て」「ちょうだい」と伝えてくる
  • 名前を呼ぶと振り向く

なかでも、子どもが何かを見つけて「あっ」と指さし、大人の顔を見る。この「一緒に見ようね」という気持ちのやりとりは、言葉の土台としてとても大切にしているポイントです。名前を呼んだときの反応は、耳の聞こえを確かめる意味でも見ています。

ママに話しかける女の子

④ 運動:指先や口を動かす力

言葉は、唇や舌などの口腔の筋肉を細かく動かして作られる音です。そのため相談の場では、体全体の動きはもちろん、とくに指先の動きと口周りの動きを見ています。

遊びの中では、たとえば次のような様子です。

  • 小さなものを親指と人さし指でつまむ
  • 積み木を積んだり、型はめに入れたりする
  • クレヨンを持って、なぐり書きをする

指先を使う遊びでは、よく見て、手を思うように動かす力が育っていきます。指さしも指先の動きのひとつで、③のコミュニケーションともつながっています。

口周りの動きは、毎日の食事の中にたくさん表れます。

  • 食べ物を前歯でかじり取る
  • 口を閉じて、もぐもぐ噛んでから飲みこむ
  • コップやストローで飲む
  • 「あっぷっぷ」や舌を出すなど、大人の口の動きをまねする

かじる、噛む、飲みこむといった動きをくり返すことで、唇や舌、あごがよく動くようになっていきます。食事は、毎日の暮らしの中にある大切な口の練習の場でもあるのです。相談では、好きな食べ物や苦手な食感、硬いものの食べ方、よだれや食べこぼしの様子など、ふだんの食事についてお聞きすることもあります。

ご家庭では、食事の時間に、お子さんの口の動きや食べ方を、そっと眺めてみてください。上手に食べさせようと頑張る必要はありません。いつもの食事の中に、言葉につながる力が育っている様子を見つけられるはずです。

一人で上手にご飯を食べる子供

保護者の方とのやりとりも、一緒に見ています

相談の場では、保護者の方とお子さんの遊び方や、声のかけ方も見ています。これは、関わり方の良し悪しを指摘するためではありません。すでにうまくいっているやりとりを見つけて、そこをもっと伸ばしていくためです。

多くの場合、保護者の方はもう、お子さんの言葉を育てる関わりをたくさんされています。それを言葉にしてお伝えすると、「これでよかったんですね」とほっとされる方がたくさんいらっしゃいます。

同じ月齢でも、お子さんの性格、成長、暮らしている環境もそれぞれ違います。お子さんと保護者が暮らしの中で無理なく言葉の力を伸ばしていけるといいですよね。

ご家庭で様子を見るときは、次の表を参考にしてみてください。テストのように一度に確かめる必要はありません。毎日の遊びや生活の中で、「そういえば、こんなことをしているな」と思い出すくらいで十分です。

土台家での見方の例
理解「くつした、どこ?」「ゴミポイしてきて」など、いつもの流れとは違う場面で、指さしや身振りなしの声かけで動ける
関心おもちゃで遊ぶ、大人の声や動きのまねをする、大人のすることをじっと見る
コミュニケーション見つけたものを指さして大人の顔を見る、欲しいものを指さしや声で伝える、名前を呼ぶと振り向く
運動小さなものを指先でつまむ、口を閉じてもぐもぐ噛んで食べる、コップやストローで飲む、大人の口の動きをまねする

話せる言葉が少なくても、この4つの土台が育っていれば、言葉はその上に少しずつ出てくることが多いです。家庭では、言葉を「言わせる」ことより、この土台を育てる関わりを増やしていくことが近道になります。具体的な関わり方は、次の回でお伝えします。

お父さんと子供がテレビを見て踊っている

こんな様子があれば、相談を考えてみてください

次のような様子が気になるときは、一人で抱えずに、早めに相談してみてください。

  • 話す言葉が少ないことに加えて、簡単な声かけの理解も難しそうに見える
  • 指さしや身振りで伝えようとすることが少ない
  • 目が合いにくい、一緒に同じものを見ることが少ない
  • 名前を呼んでも振り向かないことが多い、音への反応が気になる
  • 以前は言えていた言葉を言わなくなった

相談先には、保育園の先生、お住まいの地域の保健センター(保健師)、かかりつけの小児科、自治体の発達相談の窓口などがあります。相談することは、「何かある」と決まったということではありません。気になる気持ちを話して、今の様子を一緒に確かめる場だと考えてみてください。

相談先の選び方や、相談のときに伝えるとよいことは、以降の回でまとめます。

親子三人で公園で遊ぶ

よくある質問

Q. 話す言葉は少ないのですが、こちらの言うことはよく分かっているようです。様子を見ていてよいですか?
A. 言葉の理解ややりとりが育っている場合は、まず家庭での関わりを工夫しながら様子を見ることも多いです。ただ、保護者の方が気になっているなら、相談して今の様子を確かめるのもひとつの方法です。「様子見でいいですよ」と言ってもらえるだけでも、気持ちが軽くなることがあります。

Q. 保育園の先生に相談してもいいのでしょうか?
A. ぜひ相談してみてください。保育園の先生は、家庭とは違う集団の中でのお子さんの様子を知っています。お友だちとのやりとりや、先生の声かけへの反応など、家では見えない姿を教えてもらえることがあります。

Q. 「言ってごらん」と言わせる練習はしたほうがいいですか?
A. 言わせようとすると、子どもにとってはやりとりが「楽しい遊び」から「テスト」に変わってしまうことがあります。まずは、子どもが見ているものや、していることに大人が言葉をのせていく関わりがおすすめです。詳しくは次の回でお伝えします。

お母さんと子供が手遊びをする

まとめ

  • 2歳ごろは二語文が出始める子が増える時期ですが、言葉の育ちには大きな個人差があります
  • STが相談で見ているのは、話せる言葉の数だけでなく「理解・関心・コミュニケーション・運動」という土台です
  • 土台が育っていれば、言葉はその上に少しずつ出てくることが多いです
  • 理解ややりとりの様子が気になるとき、言葉が減ったときは、早めに相談してみてください

次回は、言葉を増やすために、ご家庭でまずやってみてほしい関わり方をお伝えします。

※この記事の内容は一般的な情報です。お子さん一人ひとりの診断や評価に代わるものではありません。気になることがあるときは、かかりつけ医や自治体の発達相談窓口のSTにご相談ください。

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